活動内容
部会長挨拶
医薬化学部会長
林 良雄(東京薬科大学)
このたび、2025年4月より日本薬学会 医薬化学部会の第18代部会長を拝命いたしました、東京薬科大学の林良雄です。創設以来30余年の歴史と伝統を誇る本部会の運営に携わらせていただくこととなり、身に余る光栄とともに、その責任の重さを実感しております。青木一真前部会長の後任として、また歴代部会長の先生方に恥じぬよう、我が国の医薬化学の発展に微力ながら尽力してまいる所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
医薬化学部会は、1991年に日本薬学会で最初に設立された部会であり、以来、我が国のメディシナルケミストリー領域の学術的発展を支える中核的な役割を担ってきました。現在では、製薬企業26社の法人部会員と約1,500名の個人部会員を擁し、産学がバランスよく参画する形で、活発な活動を展開しています。部会の運営は、法人会員企業とアカデミアから半数ずつ選出された30名余りの部会役員(常任世話人)によって担われており、多様な視点を反映できる体制が整っています。
本部会では、毎年開催されるメディシナルケミストリーシンポジウム(MCS)をはじめ、部会誌『MEDCHEM NEWS』の発行、若手研究者や学生を対象とした創薬懇話会、創薬人育成事業、グローバルな活動としてのアジア医薬化学連合(AFMC)およびその国際会議AIMECSへの貢献、さらにドイツ薬学会をはじめとする国内外の学術団体との連携など、多岐にわたる事業を推進しております。とくに近年は、企業主導による「創薬ニューフロンティア検討会」が、大学研究者との活発な対話を通じて多様な提案を行っており、産学双方の視点から創薬化学の今後を展望する重要な場となっています。また、そこから生まれた学生と企業研究者による懇談会も6年目を迎え、恒例の取り組みとして定着しつつあります。加えて、学部生・大学院生向けに部会が作成したパンフレット『創薬化学のすゝめ』は、創薬化学の魅力を伝える教材として進路選択やキャリア形成の一助となり、多くの学生や教育関係者から高い評価をいただいております。
2020年初頭に世界的に拡大したCOVID-19パンデミックは、私たちに感染症の脅威と創薬の重要性を改めて突きつけました。人類はmRNAワクチンをはじめとする新たな創薬の成果によってこの未曾有の危機を乗り越えつつあり、本部会の活動も、シンポジウムの対面開催をはじめ、徐々に通常の形へと回帰しています。医薬化学の力が世界の健康に直結することを実感したこの数年を経て、いま本部会は次なる飛躍への歩みを新たに始めています。
創薬を取り巻く環境は近年、急速に変化しています。低分子創薬に加えて、中分子ペプチド医薬、核酸や抗体などの高分子バイオ医薬、さらにはPROTAC、RNA標的創薬、組織医療など、多様なモダリティが実用化されつつあり、AIやデジタル技術を活用した創薬も加速度的に進展しています。医薬化学は、分子設計から作用機構の解明、構造最適化、さらにトランスレーショナルリサーチに至るまで、創薬の各段階において中心的な役割を果たす分野であり、その意義は今後ますます高まるものと確信しております。
今後、本部会としては、こうした変化に柔軟に対応しながら、部会員の皆様が活発に議論・交流できる場をさらに発展させ、次世代を担う我が国の若手研究者や学生の育成にも、より一層注力してまいります。あわせて、アカデミアと産業界、そして国内外をつなぐプラットフォームとしての機能を強化し、日本発の創薬研究のさらなる推進と世界のウェルビーイングに貢献していきたいと考えております。
「人が集い、知が交わり、新しい創薬の芽が生まれる」――そんな医薬化学部会であり続けられるよう、常任世話人会の先生方と力を合わせて取り組んでまいります。本部会の理念と活動にご賛同いただける皆様におかれましては、ぜひ積極的にご参加いただくとともに、今後とも変わらぬご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
2025年4月
日本薬学会 医薬化学部会
部会長 林 良雄
部会の目的
本部会は、独創的医薬の創製を目標に、関連する基礎ならびに応用の分野で研究に携わる部会員の研究発表、知識の交換ならびに部会員相互および国内外関連諸団体との連携の場として、医薬化学に関する学術の進歩普及、新薬開発研究基盤の充実強化をはかり、もって薬学会、製薬関連産業の発展に寄与する。
資料参照
日本薬学会 医薬化学部会 歴代部会長
年度 | 代 | 部会長 | 所属 | |
令和7 | 2025 | 18 | 林 良雄 | 東京薬科大学 |
令和6 | 2024 | 青木 一真 | 第一三共株式会社 | |
令和5 | 2023 | 17 | 青木 一真 | 第一三共株式会社 |
令和4 | 2022 | 国嶋 崇隆 | 金沢大学医薬保健研究域薬学系 | |
令和3 | 2021 | 16 | 国嶋 崇隆 | 金沢大学医薬保健研究域薬学系 |
令和2 | 2020 | 巾下 広 | 小野薬品工業株式会社 | |
令和1 | 2019 | 15 | 巾下 広 | 小野薬品工業株式会社 |
平成30 | 2018 | 高山 廣光 | 千葉大学大学院薬学研究院 | |
平成29 | 2017 | 14 | 高山 廣光 | 千葉大学大学院薬学研究院 |
平成28 | 2016 | 上野 裕明 | 田辺三菱製薬株式会社 | |
平成27 | 2015 | 13 | 上野 裕明 | 田辺三菱製薬株式会社 |
平成26 | 2014 | 宮田 直樹 | 名古屋市立大学大学院薬学研究科 | |
平成25 | 2013 | 12 | 宮田 直樹 | 名古屋市立大学大学院薬学研究科 |
平成24 | 2012 | 近藤 裕郷 | 塩野義製薬株式会社 | |
平成23 | 2011 | 11 | 近藤 裕郷 | 塩野義製薬株式会社 |
平成22 | 2010 | 藤井 信孝 | 京都大学大学院薬学研究科 | |
平成21 | 2009 | 10 | 藤井 信孝 | 京都大学大学院薬学研究科 |
平成20 | 2008 | 高柳 輝夫 | 第一三共株式会社 | |
平成19 | 2007 | 9 | 高柳 輝夫 | 第一三共株式会社 |
平成18 | 2006 | 橋本 俊一 | 北海道大学大学院薬学研究科 | |
平成17 | 2005 | 8 | 橋本 俊一 | 北海道大学大学院薬学研究科 |
平成16 | 2004 | 仲 建彦 | 株式会社武田分析研究所 | |
平成15 | 2003 | 7 | 仲 建彦 | 株式会社武田分析研究所 |
平成14 | 2002 | 杉浦 幸雄 | 京都大学化学研究所 | |
平成13 | 2001 | 6 | 杉浦 幸雄 | 京都大学化学研究所 |
平成12 | 2000 | 小林 利彦 | 日本イーライリリー株式会社 | |
平成11 | 1999 | 5 | 小林 利彦 | 日本イーライリリー株式会社 |
平成10 | 1998 | 池上 四郎 | 帝京大学薬学部 | |
平成9 | 1997 | 4 | 池上 四郎 | 帝京大学薬学部 |
平成8 | 1996 | 中尾 英雄 | ケムテック・ラボ株式会社 | |
平成7 | 1995 | 3 | 中尾 英雄 | ケムテック・ラボ株式会社 |
平成6 | 1994 | 廣部 雅昭 | 東京大学薬学部 | |
平成5 | 1993 | 2 | 廣部 雅昭 | 東京大学薬学部 |
平成4 | 1992 | 永田 亘 | 塩野義製薬株式会社 | |
平成3 | 1991 | 1 | 永田 亘 | 塩野義製薬株式会社 |
創薬ニューフロンティア検討会
2025年度メンバー
所属(50音順) | 氏名 |
千葉大学大学院薬学研究院 | 石川 勇人(サブリーダー) |
エーザイ株式会社 | 武田 邦稔 |
中外製薬株式会社 | 及川信宏 |
京都薬科大学 | 大石 真也 |
協和キリン株式会社 | 小野寺 秀幸 |
アステラス製薬株式会社 | 河野 友昭 |
塩野義製薬株式会社 | 日下部 兼一 |
武田薬品工業株式会社 | 久保 修 |
大塚製薬株式会社 | 篠原 俊夫 |
キッセイ薬品工業株式会社 | 清水 和夫 |
住友ファーマ株式会社 | 城 智也 |
和歌山医科大学薬学部 | 相馬 洋平 |
小野薬品工業株式会社 | 高井 繁幸(リーダー) |
金沢大学薬学系 | 平野 圭一 |
第一三共株式会社 | 平野 慎平 |
日本たばこ産業株式会社 | 三浦 智也 |
田辺三菱製薬株式会社 | 柳 友崇 |
活動の目的と基本方針
- 医薬化学部会の今後の在り方に関して常任世話人会に建設的な提案
- メディシナルケミストリーシンポジウム(MCS)や創薬懇話会などへの話題提供
- 大学で何を学生さんに伝えるべきか企業目線で助言
- 創薬人育成事業や MEDCHEM NEWS また他の部会や学会との連携に関し助言